新学期が始まって1か月半がすぎましたね。とくに保育園・幼稚園に通い始めたお子さんは一気に風邪をひく回数が増えたと思います。風邪の症状のなかでもとくに心配なのが発熱ですよね。
熱が出たとき…
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冷やすべきか!?、温めるべきか!?
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解熱薬は使うか?、控えるか?
はちょっとした問題になりますよね。
一般的な考え方や、対処法についてまとめてみたいと思います。
今回は、とくに0~2歳くらいの小さなお子さんをイメージしながら書きました。
最初に結論
冷やす・温める、解熱薬を使う・使わない、は病気の経過に大きな影響を及ぼすことはありません。
体温の数値だけではなく、
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お子さんの機嫌・表情
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手足や体幹を触ってみた温度
などを目安に体温管理をどうするかを判断してあげると良いですよ。
なぜ発熱するか?
ご存じの方も多いと思いますが、発熱は体内に侵入したウイルスや細菌などに対する防御反応です。つらそうに見えることもあると思いますが、すべてが有害ではありません。発熱のメカニズムについては、体温計メーカーのテルモのHPに分かりやすく書いてありますので、お時間がある方はご覧ください。
発熱恐怖症って?
体温の高さ自体を怖がる必要はありません(高熱=痙攣、脳・臓器がダメージをうける、は迷信です)。
ですが、国内のアンケート調査では
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6~7割のご家族は発熱すると痙攣や脳にダメージが残ることを心配している
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約2割のご家族は熱が高いと死んでしまうと心配している
と報告されています。
松井 克之.小児科臨床 66巻6号 Page1151-1157 (2013年)
実際に発熱自体でそのようなことが起こることはありません。
しかしこのように発熱に対して過剰な心配を抱いてしまう状態は、発熱恐怖症(fever-phobia)と呼ばれます。過剰な救急外来受診などの問題を生じるため実は世界的に話題・問題になっています。
体温調節の原則・実際・解熱薬の効果
家庭での体温調節の原則
本人が過ごしやすそうな調節を心掛けることが大切な原則です。
そのために必要なのは「観察」です。
見る:表情や体の動きなど全体の印象→服をまくって呼吸の様子をみる
触る:頭や首と手足を触って温度の違いを感じる
体温調節の実際1(冷やすか、温めるか?)
体温が上がる時は
1.手足が冷たくなり、体幹が熱くなる(寒気を訴えることもある)
↓
2.手足も暖かくなり、全身が熱くなる
という順番を取ることが良くあります。
熱が上がっているときは、手足は冷たくなりますので、その時は本人が嫌がらない程度に体を温めてあげてください。
熱があがりきると手足は暖かくなるので、その時は薄着にしてください。氷枕や保冷パックを使って頭部を冷やすのもこのタイミングが良いでしょう。
「冷えピタ」に代表される冷却シートには解熱効果はありません。乳児に使用すると鼻や口をふさいで窒息の可能性もありますので注意が必要です。
体温調節の実際2(解熱薬のタイミング)
「手足も暖かくなり、全身が熱くなる」タイミングが好ましいと言われています。しかし解熱薬を使うタイミングによって状態が悪くなることはありませんので、厳密に考えなくても大丈夫です。
解熱薬の効果
代表的な解熱薬である「アンヒバ座薬」の添付文書には
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解熱効果は1~2℃
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効果発現は30分後から
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効果持続は3~4時間
と書かれています。
ただし「解熱薬が効かないから重症」ということはありません。
普通の風邪のケースでも
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「ほぼ全く効かなかった」
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「下がっても0.5℃くらい」
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「1~2時間でまた上がった」
ということは良くあります。副作用も非常にまれな分、効果もマイルドなお薬、という印象です。
熱性痙攣は、残念ながら解熱薬で予防することはできないという報告があります。
また、海外では風邪症状の子どもに「4時間ごとに定期的に解熱薬を使ったグループ」と「使わなかったグループ」で症状の程度や治るまでの期間に違いが出るか?を比較した研究があります。しかし結果は「変わりなし」でした。
(Kramer MS, Naimark LE, Roberts-Bräuer R, McDougall A, Leduc DG. Risks and benefits of paracetamol antipyresis in young children with fever of presumed viral origin. Lancet. 1991 Mar 9;337(8741):591-4. doi: 10.1016/0140-6736(91)91648-e. PMID: 1671951.)
繰り返しになりますが、解熱薬の使用は経過に大きな影響はありません。「絶対に使うべきタイミング」も「ダメなタイミング」もないと考えて大丈夫です。
重症のサイン・救急受診や救急車をよぶ目安
40℃あっても(時に41℃近くあっても)、原因として多いのは上気道炎などのウイルス感染症で、数日ですっかり改善することが多いです。
重篤な感染症(髄膜炎、敗血症、一部の重篤な肺炎など)を見逃さないようにするには、以下の3つがとても大切です。
- Appearance いつも通りの外観か
- Breathing 違和感のない呼吸状態か
- Circulation to skin 不自然な皮膚色(チアノーゼなど)ではないか
救急外来の受診や、救急車をよぶ目安については日本小児科学会の「こどもの救急(Online-QQ)」というHPがとても役立ちます。症状を選び、いくつかの質問に答えることで様子を見るべきか?、受診すべきか?、救急車を呼ぶべきか?を判定してくれます。日本小児科学会のHPなのでしっかりした内容です。
41℃以上の発熱は重篤な細菌感染などの可能性がある、という研究がありますが、全く関係ないとする研究もあります。
(ネルソン小児科学20版 p1279)
あくまで個人の考えですが、41℃が半日・一晩など持続する場合は重篤なサインかもしれませんが、夜などに一時的に41℃になることは時々ある印象があります。
まとめ
体温管理の方法やタイミングについては諸説ありますが、記事を書くために調べた国内外の各種の文献では「とくに病気の経過に影響を及ぼさなかった」とする内容がほとんどです。
お子さんをよく観察し過ごしやすそうな体温管理を心掛けるのが良いと思います。