茨城県土浦市桜町の小児科

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マイコプラズマ肺炎について

マイコプラズマ肺炎が、今年の春から流行しています。マイコプラズマ肺炎は、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)という菌による感染症で、小学生から比較的若い成人を中心に流行する、発熱と、2~3週間と長く続く強い咳が特徴です。2024年8月現在、全国的な流行が見られ、茨城県も全国平均と同等に感染が広がっています。

全国(NHKのHPより)

茨城県(NHKのHPより)

コロナウイルスが流行していたここ数年間、まったく流行がなかったので私も知識をアップデートできていませんでした。今回、いろいろと調べ、情報をまとめました。ご参考になれば幸いです。

当院では迅速検査(15分)、外注検査のLAMP法(3~5日)、胸部レントゲンなどを行ってマイコプラズマの診断を行い、必要に応じて抗菌薬を使用して治療を行っています。気になる症状の方(おもに小学生で発熱と風にしては強い咳が続く方)はご受診ください。

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今回の記事の主な出典は以下の2つのHPです。それ以外の出典は、文中に書かれています。

  1. 国立感染症研究所(肺炎マイコプラズマについて)
  2. 国立感染症研究所(診療ガイドライン等に基づくマイコプラズマ肺炎治療の現況(IASR Vol. 45 p10-12: 2024年1月号))

流行しやすい時期

あまり季節の変動は目立たず、晩秋から早春にかけて報告数が多くなるといわれています。
流行する年は不規則的で1981年以降、1~8年に1回の流行がみられ、2010~2012年は流行が持続したことがありました。
Yamazaki T, Kenri T. Epidemiology of Mycoplasma pneumoniae Infections in Japan and Therapeutic Strategies for Macrolide-Resistant M. pneumoniae. Front Microbiol. 2016;7:693. Published 2016 May 23. doi:10.3389/fmicb.2016.00693

かかりやすい年齢

幼児期、学童期、青年期が中心で、7~8歳にピークがあるといわれています。個人的な経験でも、2~3歳でかかる子は珍しい印象です。

病原体の特徴

肺炎マイコプラズマという菌による感染症です。飛沫感染と接触感染がありますが、濃厚接触が必要と考えられています。
病原体の排出は症状がでる前2~8日から始まり、症状が出てからピークとなり、高いレベルが約1 週間続いたあと、4~6週間以上排出が続きます。
感染すると抗体が産生されますが、生涯続くものではなく別の年に再感染することはよく見られます。

臨床症状

潜伏期は通常2~3週間であり、通常の風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルスが3日間くらいであると比べると、感染してから、かなり後になってから発症することになります。
初発症状は発熱、全身倦怠、頭痛などで、つよい咳は初発症状出現後3~5日から始まることが多いです。
持続的にぜーぜーした呼吸の苦しさがでることが40%でみられる、という報告もありますが、全くないケースも多くあります。

診断

レントゲン以外の方法として、以下の方法があります。迅速検査とLAMP法は喉に綿棒を差し込んで検査をします

治療

2011~2012年の流行時にはマクロライド系という一般的な抗菌薬に対して耐性を持つ菌が83%を占めており問題になっていました。 2010年代後半以降のマクロライド耐性率は減少傾向にあるといわれていますが、コロナで数年間流行がなかった後の、今現在についてはまだはっきりとわかっていません。
Kenri T, Suzuki M, Sekizuka T, et al. Periodic Genotype Shifts in Clinically Prevalent Mycoplasma pneumoniae Strains in Japan. Front Cell Infect Microbiol. 2020;10:385. Published 2020 Aug 6. doi:10.3389/fcimb.2020.00385

 
抗菌薬を使っても症状の改善にはあまり効果がなかったとされる報告もあり、マイコプラズマだから初めから強い抗菌薬を使う、という方法は勧められていません。
Biondi E, McCulloh R, Alverson B, Klein A, Dixon A, Ralston S. Treatment of mycoplasma pneumonia: a systematic review. Pediatrics. 2014;133(6):1081-1090. doi:10.1542/peds.2013-3729

予防

この菌に特別な予防方法はありません。流行期には手洗い、うがい、患者さんとの濃厚な接触をさけることがすすめられています。